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ミシガンにクランベリーが!!!
意外に人は知らないが、ミシガン西部はブルーベリーだけでなく、クランベリーの産地でもある。ブルーベリー、クランベリーのどちらも砂地でないと育たない。つまり、栽培できる地域は全米でも数えるほどしかない。 ミシガン西部は希少価値があるのだ。
アメリカでは、11月のサンクスギビングにローストターキーにクランベリーソースを添えて食べる。クリスマスでも晩餐によく供される。(イギリスでもクリスマスに食べるとか?)
ミシガンの秋(10月)は、クランベリーの収穫の季節でもある。11月のサンクスギビングと12月のクリスマスに向けて、収穫、出荷と農場は慌ただしいことだろう。
ミシガン南西部のサウスヘイブン(South Haven) にある DeGrandchamp Farmsというところで10月2日に収穫のデモンストレーションがあったので、行ってきた。
どこでこの行事のことを耳にしたかというと、8月にこの農場にブルーベリーのU-pickに行った時に、「ブルーベリーのシーズンが終わったら今度はクランベリーの季節。10月にクランベリーの収穫ショーをやるから、ぜひ見に来てね〜」とお誘いを受けていたのだ。
この農家は、10年ほど前にクランベリーの栽培を始めたそうだ。
もうかなり前になるが、まだアナーバーにAnn Arbor Newsという日刊新聞があった時代、サンクスギビングも間近い11月のある日、「ミシガン西部の土壌がクランベリーの栽培に適していて、栽培している農家がある」との記事が写真入りで出た。その記事に載ったのは、多分、このDeGrandchamp Farmsだと思う。
その記事を読んで、いたくびっくりした。えっ、ミシガンでクランベリー?!! それまで、クランベリーはマサチューセッツやニュージャージーといった東海岸だけで栽培されている、とばかり思っていたから。
その記事を読んで以来、一度見に行ってみたい、とぼんやりと思っていたのだが、今年、その農場にたまたまブルーベリーのU-Pickに行ったら、クランベリーの行事のことが分かったわけ。
クランベリーの湿田には、このワゴン(hay wagon ride)に乗せてもらって行く。一人5ドル。結構お客が多く、ワゴンはすぐに満杯になった、ワゴンは2台あり、10分毎に往復していた。5分ほどで着く。
着いたら、上の写真のように、クランベリーが一カ所に集められて、機械でゴーゴーと吸い上げられているのが見えた。
パイプで吸引
おー、ほんとにクランベリーが、水にプカプカ浮いてる!
吸い上げたクランベリーは、このように集められ、トラックで運び出す。
美しいピンク色。
北米インデイアンは昔、クランベリーを染料に使っていたそうだが、うなずける。
黄色のテープでクランベリーを囲む。
テープはこの機械から。
シャベルや松葉ほうきでクランベリーをかき集める実演が行われた。これこそがcranberry harvest のイメージそのものなり。
松葉ほうきを使うのが、面白い。
クランベリーは、このように水田で収穫され、この水田は、Bogと呼ばれる。貴方もこういうシーンをTVか何かできっと見たことがあるでしょう。
クランベリーはこの水の底に根を張っている。クランベリーを植える時は水は張っていない。乾田に植えてゆく。乾田と言っても、湿った砂地でないと育たないそうだ。収穫シーズン(9-10月)が到来したら、人の膝の深さまで水を張る。機械で水田に入り、水中のクランベリーのツルをかき回し、ツルに成っているクランベリーの実を振り落とす。すると、振り落とされたクランベリーの実が水面まで浮上してくる。それを一角に集めて、ほうきでかき集めてパイプでトラックに吸い上げる。
クランベリーが吸い上げられる機械の上で、2人の実演を見守るお兄さん。メキシコ人のようだ。ミシガン西部ではメキシコ人をよく見かける。農繁期に家族ぐるみで出稼ぎに来ている人も多いらしい。この人もそうかも。
集めたクランベリーは、このトラックで、パッキング場へ運んで行く。
実演ショーの隣の水田では、この2人がほうき、シャベルで水中をかいていた。クランベリーの茎、葉をほうきで梳いていたのだろうか? 質問をしたかったのだが、ツアーガイドなる農場のおじさんが他の人にすでに包囲されて急がしそうだったので、質問しそこなった。
同じく隣の水田。端っこにクランベリーが集まっている。
実を振り落とされた後のクランベリーの茎だろうか、葉が水中にゆらゆらしているのが見える。
(水田)の水面下でクランベリーの実をツルから振り落とす機械。高価だろうな〜、何年でモトが取れるのかな?この機械でBogに入って行き、歯のような形の前部と後部で、水中に成っているクランベリーの実を振り落として行く。
残念ながら、この収穫ショーでは、この機械が水に入ってクランベリーを振り落とす場面は見せてもらえなかった。すでに振り落としてクランベリーを一角のコーナーに集めたところからの実演ショーだった。機械が水に入ってクランベリーを振り落としている様子は、uscranberries.comのサイトに写真が出ている。
機械の後部。男の子たちが興味津々。いつの時代でも、どこの国でも、男の子は機械が大好き。
クランベリーの苗。 最近は、春、園芸店の店先に並ぶようになった。試しに一度育てみたいところだが、難しいのかな?
クランベリーの苗を美しい!と思うのは、私だけだろうか?
水田 (Bog)は、水をなみなみと張ったままで冬を迎える。寒冷な土地なので、もちろん冬は水が凍るのだが、クランベリーはその氷の下で越冬するのだ。氷が霜害から守ってくれるのだそうだ。氷が霜から守ってくれるとは変な話のような気がするが、植物にとっては氷ではなく霜が危険なのですかね? 冷害ってのは霜による被害だったか(基礎知識の不足を露呈してしまった。。。)
春になって雪が溶けると水を抜くのだそうだ。それから授粉。夏に実が育つ。
3〜5年に一度、氷がまだ張っている間に、氷の上にトラックで砂をまいてゆく。すると、氷が溶けた時に砂が水を通してクランベリーにおぶさり、これがクランベリーにとっての追肥となる、とのこと。毎年同じ場所で栽培していると土地が痩せてくるからだが、砂が肥料になるとは面白い。
クランベリーは北米原産で、砂の土壌でないと育たない。だから、東海岸のマサチューセッツ州、ニュージャージー州、ナンタケット島、メーン州、西海岸のオレゴン州、ワシントン州、中西部ではウイスコンシン、ミネソタ、ミシガン、そしてカナダといった、ごく限られた寒冷な場所でしか穫れない。ミシガン西部も、ミシガン湖の浜辺で砂地(砂丘が多い)な上に寒冷なので、やはりクランベリー栽培に適している、というわけだ。考えてみると、これはスゴイ。世界中でクランベリーが育つ場所は、とても数少ないのですね。
北米以外では北欧、アジア北部に限られるとのこと。
このマップ、Wikipediaから拝借です。赤ライン内がクランベリーを栽培できる地域、グリーンのライン内が米国での栽培地域(うん、ミシガンも入ってる)、オレンジライン内がsmall cranberry(小粒なバラエテイか?)の栽培地域 だそうだ。
クランベリーはantioxidantが豊富なのでガンの予防に効果があると言われる。それだけでなく、ビタミンCも豊富で、近年「スーパーフルーツ (super fruit)」と呼ばれるようにり、その価値があらためて見直されている。ミシガンは、その希少な食料供給源のひとつなのだ。
トラックで運び込まれたクランベリーは下ろされ、右の建物内で洗浄、選り分けされる。
建物内にパイプで流し込まれ、さあ、洗浄開始。
2人の女性が選り分け作業。メキシコ人のようだ。さっきのお兄さんと家族かも。こういう単純農作業は、必ずといっていいほどメキシコ人。アメリカ人でこういう作業をやりたい人はもういない。というか、こういう作業をきちんとできるしっかりしたアメリカ人は、もう見つからない、と言った方がいい。うー、私もこんな作業、何時間もとても出来そうにないな。。メキシコ人は、アメリカ人にとっては安すぎる仕事でも一生懸命やり、作業のスピードが早く、(賛否両論あるだろうが)今やアメリカにとってなくてはならない労働力であるのは事実。
人手による選別の次に、さらにコンピュータでも、Eject (不合格品の意味だろう) を選り出す。
モニターをよく見ると、「% Ejected (不合格率) 2.11%、Average Ejected (平均不合格率) 1.97%、1分間の検査個数が711個 と表示されている。コンピュータに、色合いの基準を設定しているようだ。農業もなかなかハイテクである。
モニターの裏側に回ったところ。
これが、工程の最後のところ。右側の先端からクランベリーが次々と樽の中に吐き出される。
樽からバスケットに移される。
売店もあり、クランベリーを使ったいろんなお土産が売ってある。女性が多い。やはり食べ物に興味あるのは女性か。
この日は土曜日なので、男性陣は家でテレビでアメフト観戦、ということも理由のひとつだろう。10月の土曜日は、アメリカの男はまず、アメフトを観ている、と言って過言でない。
中央の青いドアの向こうで、クランベリーの洗浄、選り分け作業を行っている。夏は、そこでブルーベリーの作業をやっていた。お客がいつでも見れるようにオープンにしてある。このFarmは、そういうとこ、客商売が上手。
クランベリーを2パック買った。1パック$1.50と安い。売り子さんに聞いたら、ここでパッキングしたものだそう。でも、このフレッシュクランベリーは、あのBog(水田)から穫れたものじゃなかったのだ。
実は、クランベリーの収穫にはWet harvest とDry harvest の2通りのやり方がある。
今回私が見てきた収穫ショーは、Wet harvest。Wet harvestで穫れたクランベリーは、クランベリーソースやクランベリージュースに使われる。
フレッシュなクランベリーは、Dry harvestで収穫されたものだ。Dry harvestは、田んぼに水を張らない。収穫は、やはり機械を使って櫛ですくうようなやり方で行う。Lawn mowerのような感じ。
乾田の収穫ショーはなかったが、乾田はきっとBog のすぐ傍にあるのだろう。そこから穫れたフレッシュクランベリーを私は買った、というわけだ。
9月〜12月にスーパーの野菜売り場に並ぶフレッシュなクランベリーは、このDry harvestで穫れたもの。
パックに「Michigan」と印刷してある。お店で売られているのは、Ocean Sprayブランドが絶対的に多数派だが、ミシガン産のラベルのクランベリーも、最近は結構見かけるようになった。
このファームは、この地域の他のファームとco-opを組んで、夏はブルーベリーも出荷しているそうだ。ブルーベリーの方は「Greatlakes Blueberries」の名前がついた白いボックス入りで、8月頃店頭によく見かける。
昔(まだ機械が発明される前)は、クランベリーは全て乾田で、しかも手で収穫していた。19世紀にNantucket (ナンタケット) 島で、村人がこぞってしゃがんで手でクランベリーを摘んでいる絵があり、wikipediaに載っている。
駐車したすぐそばが、ブルーベリーのU-pickの場所だった。夏に来たときは青々とした緑だったが、今は紅葉している。ブルーベリーが紅葉するとは知らなかった。なかなかキレイ。
クランベリーの加工場と売店があるFarmのメインの建物の外観。
収穫ショーのサイン
道路の向こう側にもブルーベリーの樹木がズラリ。この道路はBlue Star Highway といって、この地方のカナメのような道。名前がいい。「Blue Star」だなんて、詩的でロマンがある。
クランベリーの収穫デモ(harvest demonstration)のような、農業を観光の目玉にすることが今アメリカで流行っていて、「agri-tourism(アグリツーリズム)」と呼ばれる。(agri は agriculture のagri)食べ物がどこから来ているのか、加工工程で一体何が加えられているんだろう、と考える人が増えて来たためだ。できるだけ添加物の入っていない食べ物、有機栽培の食べ物を食べたいという人が増えていることと、このアグリツーリズムのトレンドは合致するように思われる。かくいう自分も、食べ物のルートにはかなり関心があり、こうしてアグリツーリズムの収穫ショーを興味津々でわざわざミシガン西部の辺境(?)まで見に来たのだった。
このfarmは、Ocean Spray社にも出荷しているそうだ。
Ocean Sprayブランドは、米国でクランベリーの代名詞のようなもの。アメリカでクランベリーといえばOcean Spray。Ocean Sprayは、世界最大のクランベリー供給業者だそうだ。ミシガンにOcean Sprayのサプライヤーがあるとは知らなかった。Ocean Sprayはマサチューセッツにある。だから、クランベリーはマサチューセッツ周辺のみで栽培されているとばかり思っていた。
マサチューセッツ州のケープコッド (Cape Cod) へ昔行った時、湿田があちこち見られ、それらがクランベリーのbog(水田)であると聞いていた。そのbogを、日帰りで行ける同じ州内に見ることが出来て、私はほんとに幸せ者!! でした。
自分で自分のブログにコメントです。これを書いて以来、ミシガン産のクランベリーがもっとお店に出回り始めました。 ところで今年(2011年)は収穫ショーはないようです。来年(2012)にまたあるそうです。同ファームのウエブサイトに書いてあります。 I am writing a comment on my own blog. I have been seeing a lot more Michigan cranberries in stores since I wrote this article. Looks like there is no harvest show this year (2011). Their website says they will do it next year (2012). Look forward to it!