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ミシガンシエター (Michigan Theater)
アナーバーのダウンタウンにある、まるでミニオペラ座のような映画館。
一歩中に入ると、シャンデリアや豪華な装飾の天井、壁に圧倒されそうになる。
「これ、ほんとに映画館?」
何度行ってもその華麗さに驚嘆する。
ミシガン大学のキャンパスタウンの目抜き通りと言えるState Streetと、アナーバーの要の通りであるLiberty St. の交差点のすぐ傍にある。すぐ近くには、アールデコ建築のState Theaterがある。
ミシガンシエターの建築は、「ロンバルドロマネスク様式(Lombard Romanesque style)」というらしい。リズム感のある装飾アーチ、入念な彫刻のはめ込みがないのがその特徴とか。
まるで姉妹のように、ミシガンシエターのすぐ傍にあるState Theater
チケット売り場。
天井がすでに豪華な装飾となっているのに気づく。
入口のドア。その上には入念な装飾が。
中に入ると、豪華なインテリア。
左手に売店。
余談:ここの支配人が、確か、うちの上の子の同級生のお父さんだったと思う(20数年も住んでると、じもば(地元のおばさん)になってくるなあ)。
豪華な装飾の高い天井と、2階の手すりが見えてくる。
うーん、スゴイ!
華麗さに魅せられ、つい2階に上がりたくなる。階段の手すりも豪華。まるで「ベルサイユのバラ」の世界(古い?)
ズームアップ。 なんと念入りな。米国も昔は、こういう、ヨーロッパ並みの丁寧で華麗な文様を入れた建築を作っていたのだ。
金色の文様には、ほんとに金が使われているそうだ。
随分お金がかかったに違いないと思うが、発起人はこの地域の実業家Angelo Poulosという人。1927年のこと。デトロイトのMaurice Finkelという建築家がデザイン、1928年に完成。
モーツアルトが現れそうな空間。
鏡とシャンデリアが豪華な雰囲気の創出に効果を発揮している。鏡とシャンデリアの組み合わせは、ヨーロッパの18世紀のオペラハウスと同じスタイルだそうだ。どうりで!
1970年代、客の入りが悪くなり、取り壊されそうになったが、地元住民の運動により、歴史的建築物として保存されることになったそうだ。
それ以来、Michigan Theater Foundationtという非営利団体がこのシエターを運営している。寄付はいつでも募っている。あなたも寄付できますよ!
いろんな人が手すりに触れるのだから、メンテがさぞ大変なことだろう!
2階の座席への階段。
こういうものが2階にあった。体重計。かなり古そう。誰が映画館で体重を計るの??
メインの上映室(The Historic Auditorium)
1700人を収容でき、パイプオルガンがある。パイプオルガンは1927年作(Barton Theater Pipe Organという名前)。このシエターのために作られたとのこと。
このメインの部屋は、音響的に、クラシック音楽の演奏に適しているそうだ。パイプオルガンは今でもよく弾かれるので、一度聴く価値あり。
この映画館が建てられた1920年代は、まだ、サイレント映画の時代だった。映画を上映しながら生の音楽演奏をしたそうだ。だから、ライブ演奏にふさわしく音響的に優れた上映室を建てた、というわけだそうだ。
この部屋の他にもうひとつ、小さな上映室がある。The Screening Roomと呼ばれ(1999年に増築)、最新の音響システムが備えられ、マイナーな映画の上映がそこで行われる。
1920年代頃は、映画館に行くことは、今のデイズニーワールド、デイズニーランド旅行に匹敵するものだったそうだ。映画はまず労働階級の(現実逃避の)娯楽だった。中流階級にとって映画はちょっと、おどろおどろしたうさんくさい、恐いものだったらしい。で、中流〜上流階級も引き入れようと、豪華絢爛なオペラハウス的建築の映画館が建てられた。それは見事大ヒットし、中流〜上流の人々にとっても映画館は最大の娯楽の場所、そして文化のセンター的存在となったのだそうだ。
映画祭: サンダンス映画祭(Sundance Film Festival) をご存知だろうか。俳優ロバートレッドフォードが立ち上げた映画祭。毎年1月下旬頃にユタ州で行われるが、ユタで映画祭が行われている間、他のいくつかの都市でも試写会が行われる。今年(2012年)、ミシガンシエターは2年連続でその会場のひとつに選ばれた。全米でたったの9つの会場(ボストン、NY、シカゴ、SF等)のひとつ、そしてミシガン州で唯一の会場に選ばれるのだから、これは、なかなかスゴイことだ。
また、アナーバー映画祭 (Ann Arbor Film Festival) というのも3月頃にあり、その上映会場もやはりここだ。
普通なかなか見れない映画: 昨年(2010年)には、巨匠スタンレーキューブリックの作品のラインアップが上映された(2001年宇宙の旅(2001 A Space Oddysay)、時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)、バリーリンドン(Barry Lyndon)等)。
だいぶ以前、役所広司主演の「Shall We ダンス?」が上演されたことがあったが、日本映画はここには殆ど来ない。ヨーロッパ映画、アメリカ映画が殆どだと思われる。経営陣の好みなのかも。
もっと日本映画や他のアジア映画を上映してくれたら、もっともっと偉大な映画館になるのに、と思う。
子供向け映画: 大人向け芸術派の映画が多いが、「Not Just For Kids」というシリーズで、子供向け映画も頻繁に上映している。
ライブ音楽演奏: 映画だけでなく、音楽のライブ演奏にも適した所。ここはアナーバー交響楽団の根拠地でもある。
ジェフダニエルという俳優をご存知だろうか。90年代に「Dumb & Dumber」という映画でジムキャリーと共演した俳優だが、実は、この俳優、アナーバーの隣町のチェルシーという小さな町の出身で、今もこの町に家を持っているらしいのだが、彼はギターも出来るようで、ミシガンシエタでコンサートをしたことがある。彼の息子はロックバンドに入っているようで(余談:私の下の子と同い年で、野球の試合でライバルチームどおしで対戦したこがある)、父子で共演したようだ。
2年ほど前には、元ミシガン大アメフトのコーチ、ロイドカール(Loyd Carr)氏がナレーターを勤める「ピーターと狼」のコンサート演奏も、ここで行われた。
ここはアメリカなので、映画を映画館で見ると、もちろん字幕などは出ない。何て言っているのか分からないことも多々あるだろうが、それでも、こういう芸術的、華麗な映画館の銀幕で映画を見るのは、やはり自分の家で見るのとは違う。「これが映画鑑賞というものだ!」と思わせてくれる、古き良き、偉大な映画館であると思う。
the League of Historic American Theatersというリーグのメンバーであり、2006年には「Outstanding Historic Theater」賞を受賞したそうだ。
ミシガンシエターのウエブサイト http://www.michtheater.org/