先週の週末(8月4〜5日)は、ミシガン湖で3人が溺死するという悲惨な週末となってしまった。
3件の水死事故とも、ミシガン南西部のビーチで起きた。
そのうちの一人は、シカゴ大学の医学教授、それも小児外科のチーフという、とても偉い先生で、そして台湾出身だった(リュウ先生:享年50才)。
チェリービーチ(Cherry Beach)という、ニューバッファロー(New Buffalo)とウオーレン大砂丘(Warren Dunes)の中間あたりにあるビーチで起きた。
リュウ先生は、溺れかけている2人の12才の男の子を助けた後、強い引き波(a rip current)にさらわれ、自分が溺死してしまった。引き波とは、岸から沖へ向かって流れる激しい海面の流れ、と辞書にあるが、ここでは湖面の流れ、ということだ。
ミシガン湖、特にニューバッファロー近辺は、激しい流れが起きることが時にあるようで、ニューバッファロービーチの公式サイトには、次のように注意が呼びかけてある。
「もし引き波にさらわれてしまったら、波に逆らわず、ビーチに平行に泳いで引き波から脱出すること。そして、岸に向かって泳いで戻ること。(all swimmers should be aware of how to react if caught in a rip current. If the caught in one of these currents (you will know it if it happens) you must react properly. Do not fight the current – swim parallel to the beach until out of the current, then swimming back to shore.) 」
(ちょっと英語の文法が変なところがあるような。。。急いで書いたのかな)
ビーチに平行して泳ぐ。。。なるほど。 貴方は知ってた?
私は(この年になるまで)そんなこと知らなかった。
亭主に聞くと「そんなこと(アメリカ人なら)誰でも知ってるよ」。
へえ〜〜〜!
「アメリカ人なら」は、「中流階級以上の(白人の)アメリカ人」と置き換えた方がよいかもしれない。貴方もたぶんご存知だろうが、この国では子供の水泳教育が盛んで、まだおしめをつけた赤ちゃんの水泳クラスもあるくらい。小学生高学年になる頃までには、ほとんどの子供が上手に泳げるようになっている。私も、息子2人とも3才の頃から水泳クラスに連れて行った。(ところで、アフリカ系米人(「黒人」ではなく「アフリカ系」と呼ぶ方が良い)はなんと70%以上が泳げない。そのことは大きな問題であるし、彼らも問題であることを最近認識し始め、水泳を習おう!とのかけ声が、アフリカ系コミュニテイの中でかけられつつあるらしい。大人の水泳クラスに参加している人、プールで泳いでいるアフリカ系の人が、最近とみに増えた印象)。
しかし、プールで泳ぐのと、湖や海で泳ぐのとは、また違うものだ。
プールで何100メートルも泳げる人でも、プールの深いところで立ち泳ぎできる人でも、湖や海で激しい流れにさらわれてしまったらどうやって溺れずに脱出きるか、知っているだろうか?
助けられた2人の男の子は、湖でカヤックに乗って遊んでいたそうだが、激しい波に打ちのめされて湖に放り出され、波間で溺れかけていた。その週末は風が強く波が荒かった。ミシガン湖は、前日は穏やかで凪いでいても、次の日は打って変わって荒れることがあるので、注意が必要である。
リュウ先生はその日、チェリービーチで家族と休暇を楽しんでいた。先生を含めビーチにいた人々は、溺れかけている子供2人を波間に目撃したことだろう。誰かが救助隊を呼んだのであろうが、先生は救助隊が到着するのを待たずに、自ら水に入って行き子供たちを助けたそうだ。
しかし、子供を助けた後、自分が強い引き波にすくわれてしまい。。。
勇気のある立派な人だったんだなあと思う。誰かが溺れかけているのを見て、自ら水に入って助けようとする人が、一体何人いるだろうか、と思う。
が、その一方で、考えてしまう。
リュウ先生は、どれくらい水泳ができたのだろうか、と。台湾での子供時代、先生は水泳を上達する機会に恵まれていたのだろうかと。
何故そう思うのかというと、リュウ先生が、私とほぼ同じ時代に同じ極東アジアで育った人だったからである。
私の子供時代(1960年代)、日本はまだまだ貧しく、インフラストラクチャ(social infrastructure) はまだお粗末だった。100万人もの人口の都市に公営プールはほんの2つしかなかったと記憶している(スケートリンクはたったの1つ、公営テニスコートや公園も数えるほど)。多くの学校にはすでにプールが出来ていたものの、私の行った小学校も中学校もプールはまだなかった!
リュウ先生が子供だった時代、台湾に公営プールはたくさんあったのだろうか? アメリカ人のように、子供に水泳を習わせるのが親として当然の義務、という意識が台湾の親達にはあったのだろうか? (私の親にはなかった。)
そして、海や湖で潮に流されたり、水中の藻などが足にからみついたりしたら、パニックせずに脱出する方法をたたきこまれる機会に恵まれていたのだろうか?
米国の子供達は、夏の子供キャンプやボーイスカウトで、野外での経験を積むことが多い。私の息子達も野外での水泳訓練を受け、湖とプールが違うことを学んだし、溺れかけている人の救命の仕方も習った。多くの子供が野外でのサバイバルスキルを習得して成長するようだ。こういうところ、アメリカの優れているところだなあと思う。
海での水泳経験がたっぷりある人は、日本人も台湾人も、多分、アジア系には少ないと思う。ミシガン湖は海に似ているところがある。皆さん、ミシガン湖では、泳ぐにせよ、カヤックやボートで遊ぶにせよ、くれぐれも注意してくださいね!
この水死事件は大きな報道がされた。以下、いつかのリンクを挙げておく。亡くなったリュウ先生の写真が出ている。とても悲しく遺憾な出来事だった。
なお、同じ週末に近くで水死した他の2人も、やはり、激しい水流や大波にさらわれて溺れたようである。
こちらのブログの存在今気づきました(-_-;) 日本も海に囲まれているので離岸流の事故が多く、ニュースで説明があったりします。泳いでも泳いでも岸にたどり着けず体力消耗するだけだから、平行に泳いで脱出しなさいって。湖でもこんなことがあるんですね。
happyuanさん、ミシガン湖はまるで海のようです。水難事故が毎年起きるので、皆さん、くれぐれも注意して、海水浴、じゃなかった湖水浴を楽しんでいただきたいものです。